フジノハナガイ科の一種であるナミノコガイ Latona cuneata(Linnaeus, 1758)は房総半島以南、熱帯インドから太平洋の潮間帯上部の砂底に生息しています。この貝は打ち寄せる波に乗って移動することで有名です。波が寄せると砂の中から飛び出て波に乗り、波が引くと急いで殻を立て水管だけ出して砂に潜るという行動を通して、潮の満ち引きに合わせて砂浜を移動します。
また、同じフジノハナガイ科Latona属のフジノハナガイLatona semisulcata semigranosa(Dunker, 1877)も波乗りをすることで有名です。フジノハナガイは房総半島以南から中国に分布します。
これらの貝たちはその行動から『波遊び』の異名を持ちます。
フジノハナガイとナミノコガイは殻の内面の腹縁に注目して見分けることができます。腹縁に刻みがある方がフジノハナガイで、平滑ならナミノコガイに分けられます。
潮干狩りでナミノコガイが採れることがあります。お味噌汁の実にすると良い出汁が出て美味しいそうですが、採る際にはその地域の絶滅危惧種や漁業管理組合の採捕禁止種に指定されていないかを十分に確認してから採集するようにしましょう。
参考文献
奥谷喬司 (編著) 日本近海産貝類図鑑 第二版 東海大学出版会, 2017
愛知県レッドデータブック2020>フジノハナガイ(2025年1月19日閲覧)
https://kankyojoho.pref.aichi.jp/rdb/pdf/animals/species/kai/%E3%83%95%E3%82%B8%E3%83%8E%E3%83%8F%E3%83%8A%E3%82%AC%E3%82%A4.pdf