これまで見てきたように、砂浜海岸は様々な生物を育む場になっています。波打ち際には貝やカニ、ヒトデの仲間などが遊び(コラム19-21)、陸地側に目を向けると、様々な海浜植物が生えていたり(コラム18)、スナガニが走り回っていたりします(コラム22)。また、砂浜の生物は磯や干潟に比べてその密度が低いように考えられがちですが、砂の間隙には肉眼で視認できないサイズの多様な生物が生息していることが、近年明らかになってきています。
砂浜は、そのアクセスの容易さから人と海を繋ぐ場所としても機能しています。海水浴や貝殻拾いは、夏のレジャーとして誰しも一度は経験があるものと思います。地域によっては、砂浜から網を曳く地引網などの漁業にも砂浜が利用されることがあります。
さらに、防災的な側面からも砂浜の重要性を説くことができます。砂浜海岸は波浪を弱め、堤防の越波を防いだり、海岸部の浸食を妨げたりする役割を担っています(バッファー・ゾーン)。
このように、砂浜海岸は私たちと、それを取り巻く生物たちを繋ぎ、育む場として重要な役割を担っているといえます。
参考文献
須田雄輔(編). 2017. 砂浜海岸の自然と保全. 株式会社生物研究社. 東京.
内田竜雄. 2023. 我が国の海岸保全の現状と課題―砂浜の保全を中心として―. レファレンス 872: 27-54.